【僕らは今日も、極限状態を生きている。】
















「ああぁぁあぁぁぁッ!!!!
 どうしよう、アリア!ウソ、これ予想外!!」



「なぁに?」



「見て、コレ!」




バッ






ほがらかな陽気の下、転職に行ったミミウ、アリア、ファジー、ライン。

もらった転職服に、その場で着替えようとミミウ&ファジーは服を脱ぎだしたが
そこはそれ、絶対にマズイからというラインの説得でギルドハウスに至る。

更に、女の子なんだから着替えは自室でねというシンラの言葉に従い
ミミウとアリアは、二人で使用する部屋に戻ってきていた。


もたもたと着替えるアリアを意に介さず、とっとと着替えたミミウの絶叫。



アリアに声をかけ、さっと指差す自分の姿。

きょとりとしてミミウの指が示す箇所を見るアリア。



「腹巻?」


「そう!どうしよー、もしかしてと思ったけど似合わない!」


「アップリケする?」


「虫食いの腹巻を買い換える余裕もない貧乏だと思われたくない・・・!」


「むー。」






ミミウの腹に燦然と輝く腹巻。




二人で見つめることしばし。

扉をノックする音と、ラインの声。



「ミミウー、アリアー。着替え終わったら早く出て来いって。
 転職祝いにレストラン連れて行ってくれるんだって。」


なんでかシンラさんは複雑な表情だけど、そっと付け加えられたセリフには耳も貸さず
扉を凄まじい勢いで開けるとミミウはラインに詰め寄り叫んだ。


「ラインー!聞いてよ、聞いてー!!
 腹巻が似合わないんだけど、あたしこれからどうしよう〜!!」


アリアへやったように、自分の腹を指で示すミミウ。
一瞬あっけにとられたが、気を取り直してラインはツッコんだ。



「腹巻なんてつけなきゃいいんじゃ・・・・。」


「でも、昨日腹踊りしたから油性マジックで腹にオヤジの顔が書いてあったりして。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かんないよ、ミミウ。
 オレにどう反応しろって言って・・ゴシャアッ




「今のはボケに来てるんでしょ!ツッコミ忘れてどうすんのよバカライン!!
 あたしみたいなレディがそんなことするわけないじゃん!!」



(いや・・しかねない・・・・・。)




容赦なく殴られ、床に倒れこんだまま心の中だけ冷静な言葉を吐く。
口をつく言葉は「痛い」とたったそれだけ。






しばらくして、なんやかんやで着替え終えたミミウとアリア。

いざ出かけようと待ちわびるギルメンのもとへと登場。



「あら、似合うじゃない二人とも。」


にっこりと笑い、定番のセリフを投げかけるイナリ。
対して、アリアは素直にお礼を述べたがその横で複雑な表情を浮かべるミミウ。

同じ衣装を受け取っている兎仲間のヴィッツが
服に関して悩みでもあるのかと、首をかしげてたずねた。

ミミウは答えていわく。


「腹巻が・・・似合わない・・・・・。」



((((似合ってどうするんだ・・・・・・。))))



遠巻きに見ていた一部メンバーは、言いようのない思いを抱え出発を待つ。

シンラの差し金だと気付いたカヤのアッパーはその人に炸裂。


「いいのよ、腹巻なんかしなくて。
 でも、野宿するときはちゃんとつけなさいね。お腹壊すから。」


「うん!」



((((あんまりレベル変わってねぇ・・・・・!!))))



シンラの、お腹を出して四六時中すごすなんて体に障るという発想も凄かったが
環境の整っていない場所では装着すべきというカヤの意見も凄まじい。

確かに小さい子どもはお腹を壊しやすい。

それゆえに発案としては間違っていないが、何せミミウたちは小さい子どもには相当しない。
ましてやこんな冒険業をしていて、腹巻とか言われても困るはずだ。


しかし、ミミウは良い子の返事。


カヤは上機嫌でミミウの頭を撫でて、可愛いギルメンの転職を祝っていた。

















「あれだよな、ガキばっか集めるわけだ。」

「それは、アレか・・ヒエン。シンラはロリkゴシャッ


外食inファミレス。

シンラ筆頭に、普段忙しくしていてあまり家にいないカヤやイナリ。
転職した子どもたちはもちろん、一悶着の末仲間になったバクたち3人やヴィッツ、シオン。
今、ペンギンが熱いギルド総勢13名。
団体用の座敷に通されて乾杯(子どもたちは こどもののみもの でカンパイ)


出入り口付近で注文をしているシンラと、そこから一番離れた場所にいるヒエンたち数名。
間に座り騒ぎまくる子どもたちのおかげで声が通らないのをいいことに
ヒエンに便乗したリィンのぶっちゃけセリフはヴィッツの殴りで綺麗に止まる。


「世話好きって言え。ロリコンはあんただ。」

「可哀想なオレ・・・なんでロリコン扱い・・・。」


まぁ、ともかくとヒエン。
もめているリィンとヴィッツは無視。


「カヤといい、シンラといい、腹巻っていう発想が古い。」

「うーん・・・少しなぁ。確かに効果的なんだけど、若者の発想じゃないな。」


愚痴とも取れるヒエンの発言を頷き聞くバク(しかしシンラたちに負けず劣らず世話好き)

ヴィッツを止めようと、小さな努力をしていたシオンがため息。


ケンカのままに、リィンは言った。


「でもホラ。あぁいうカンジで世話になってたじゃん、ヒエンもガキだったころ。」


「ガキじゃねぇ。背が低かっただけだ。
 つか、オマエも同じぐらいだったしな。」


「あぁ、そうそう。かわいかったよな、あの頃のオレたち。」


「いや・・・全然。」


「成長期がオレから可愛さを奪い、美しさを与えた。」


「オマエもう黙れ。」



ヒエンの睨みに臆することなくリィンはなにやら騒いだが
それもいつの間にかヴィッツとの言い合いに摩り替わる。

バクは、懐かしそうに目を細め呟いた。


「よく、戦闘不能になった二人を持って帰ってたなぁ・・・。」


「・・・・・・・・・・・。」













月夜に星がきらきら。

満たされた腹と、空っぽになった財布。




家へと向かいながら、ミミウが言った。


「あたし・・・やっぱり元の服でいいや。」

「また突然・・。」

「だって、まだ11歳よあたし。この年頃がヘソ出しておしゃれもへったくれもないじゃん。」

「とか言いつつ、腹踊りが出来なくなるからだろ。」

「しねーよ、バカライン。誰が毒吐けって言った。」

「あれ、でもミミウ。今度ドジョウ掬いするって言ってなかったけ?」

「それは腹踊りじゃないよ、ファジー!」

「なんか、親父臭い・・・。」

「バカラインうるさい。そもそもあんたなんて服のサイズ合ってないじゃん。」

「成長期だからだってさ・・・。てか、もうオレも元の服でいいや・・。」

「マジ?じゃあファジーは?」

「オレも元の服にするぜ。首元かゆいし!」




((((そう来たか・・・・。))))




夜だというのに抑制のない声色で述べられる服装エトセトラ。

一安心したように胸をなでおろすシンラ。


でも、カッコイイから戦いのときは着るよとミミウの振り上げた拳。

夜空に吸い込まれる子どものはしゃぐ声。















「むしろ、逆が想像つかないよね。」


「あ?」


「だって、リィンさーあんたは昔からヒエンたち知ってるから普通と思ってるんだろうけど
 バクやヒエンの基本職の姿って想像しがたい。」


「・・・・・半ズボンか・・・(獅子)」


「そうよ・・・半ズボン・・・(獅子)」


「もうすぐカムバックするぜ・・・半ズボン(獅子)」


「そっか・・・そろそろ戻るのか、半ズボンに(獅子)」




「着ないからな。」(獅子)




「「オイオイ、期待を裏切らないでくれ。獅子。」」






end

<後書き>
そんなわけで変装ですという小説でした。
お粗末様(´v`)










変装ですから