【つれないねベイベー】













午前11時半。


ソファーの上で読書にふけるリューン。

床の上で腹筋をするファジー。

同じく床の上で腕立てをするミミウ。

そして機械を改造するノットギルメンのライン。



鳩時計ならぬペンギン時計がピヨリと一声。

ペンギンがそうやって鳴くわけが無いというツッコミは大昔にシンラがスルー。



4人それぞれ、頭の中でふと考える。


(そういえば、今日誰が食事作るんだ?)



普段であれば出かける前に昼食の用意をしていくシンラが今朝は珍しく何も作らず外出。

そんな時、昼になるとカップ麺を買ってきてくれるカヤも本日は不在。



やはり食事には目が無いリューンが作るのだろうかと、ミミウとファジーはそれとなく視線を送る。
ラインは胸に手をあてて考えてみる(最も無意味な行動)

(一人除く)全員に自分が見つめられていることに気付いたリューンは本を閉じて言った。



「作ってもいいけど、9割オレ自らが食べるからな。」


「「「えぇー!」」」


声を揃えて不満を述べるミミウとファジーとライン。


3人の意見なんぞ聞く気もないとばかりにリューンは起立。



「よし、4人なら10人分も作ればOKだな。4人なら・・・ん?」


マイエプロンと三角巾を装着しながら、ふとリューンは振り返る。

親指を下に向けてブーイングをするミミウとファジーとライン。




なんか、足りない。




「あー・・・・あれだ、アリアは?」


「アリア? ・・あれ?さっきまでソファで寝てた気がしたけど・・。」


ひとしきり室内を見渡してもいないということで、ミミウが女部屋へ向かう。

きっといるだろうと多寡を括り食事を作り始めるリューン。


しばらくすると、渋い顔をしたミミウがリビングに戻ってきて言った。



「女部屋にいなかったよ?」


「男部屋は?」


「あたしが覗いて良いの?」


「・・・・・・・・・。」



調理の手を止め、リューン、ファジー、ラインそしてミミウ 全員一緒に男部屋へと向かう。
誰も片付けをしない所為でありえない散らかりを見せるという部屋へ。


代表としてファジーがドアに手をかける。
思い切りよく開かれる扉。







「「「「あ。」」」」


案の定、リューン愛用の天蓋付きベッドで眠るアリア。

飽きれたように溜息をつくリューン。

それよりも部屋のありえない状況に驚くラインとミミウ。


ファジーが言った。


「なんで、わざわざ男部屋に来るんだと思う?
 それが解決すれば、アリアがこっちに来ることなくなるよなぁ・・。」


あえて聞かれても困るけれどと、リューン、ミミウ、ラインは考える。

しばらくして、ラインが口を開いた。


「・・・・日当たり?」


女部屋よりも日当たりがいい男部屋。
何故カヤさんに限ってシンラさんにこっちを譲ったのかは分からないけれど、明らかな差。

だったら、とミミウは言った。





リフォームすればいいのか。









「・・・・極論というか・・。」

「でも、そうでもしないとこれ以上人が増えたとき大変だしな〜。」

「マスター、メンバー増やすつもりらしいしねー。」

「この形気に入ってるんだろ・・じゃなきゃリフォームする・・。」

「そっか・・・。」


しみじみと見れば見るほど微妙なギルドハウス。
テント暮らしよりマシと言えばマシだが・・なんとも。


まぁ、あのマスターは何考えてるかよく分からないからこのことは考えないでおこう。


リューンがキッチンへと向かって歩き出す。
それに付き合って3人も歩く。



「つーかさ・・このギルドハウス一番の謎って、入り口の巨大な騙し絵だろ・・。」


「え?」


「ホラ、玄関入ってすぐ正面に、豪邸の一部みたいな巨大な絵が描かれてるじゃん。」


「あー、あれね。見慣れると中々いいよね〜。バカラインには分かんないかなぁー。」


「えーッ!オレじゃなくて、シンラさんが・・・・。」


「ほっとけ、ライン。突っ込めば突っ込むほど会話が泥沼化する。」



冷蔵庫の中からチャーハンに使えそうな食材を取り出すリューンの瞳は、言葉とは無関係な輝き。
どうみてもアリアを入れて5人で食べきれる量ではない食料の数々。

10人前で済んでない。




(泥沼化・・。)




家計簿に向かって泣き叫ぶ哀れなあのマスターの姿はやたらリアル。

ペンギン時計が12回、ピヨリと鳴いた。




end

<後書き>
すみません、書き急ぎました。
百万回土下座しますorz










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